約250年余前から伝わる兵庫県小野市の伝統の包丁 播鍛。

播鍛

世界に通じる新しい刃物ブランドを、播州・小野市から

Q:新ブランドを作るに至ったきっかけを教えてください。

河島 貴久 氏

河島
私たちの地元、兵庫県小野市は、古くから大工道具の製造で栄えた町です。当社も小野市特産の刃物卸専門として昭和初期に始まり、私で3代目となりますが、私自身、新しい事業に取り組んでみたいとずっと考えていました。刃物製造の地元で生まれ育ったものですから、やはり地元で作っている刃物で勝負したい、本物で勝負したいと考えていたとき、「包丁」が海外で人気があることを知りました。 小野市は、大工道具や鎌は有名だけども、「包丁」を作っている職人は少ない。確かな腕があって、新しいことに一緒に挑戦してくれる職人さんは…と考えた時、一番始めに顔が浮かんだのが、田中さんでした。 昔からの技術を受け継ぎつつも、いろんなところとコラボレーションしてユニークな包丁を作られる発想力の豊かな田中さんは、嘘やハッタリのない、正直な人柄も魅力的で。ぜひ一緒に海外にチャレンジしたいと思って、すぐに声をかけました。

田中 誠貴 氏

田中
僕としてはずっと、「刃物は切れて当たり前。面白いものをつくってこそなんぼ」という思いがありました。「面白い」っていうのは、アウトドア専門や釣り専門のナイフとか、料理人で包丁が好きな人とか、ターゲットを絞って、その人達が使いやすい刃物を作るということ。最近は、価格のことを言われることが多く、正直、モノづくりに気が入らないことも少なくありません。そんなときに、「いいものだけを売りたい」「安く売るつもりは全くない」という意志を持つ河島さんからオファーをいただいたので、すぐに思いが合致したんだと思います。一からすべて手作業で作っているし、いいものを作っていると自信持って言えます。
河島
今は、鋼と地金がくっついたシート状のものが売られていて、それをカットして包丁を作っている廉価版も多い。それだと、叩いて熱して冷ましてを繰り返しながら、強度としなやかさが出るはずの鉄の組織がそもそも違う。田中さんのところでは、今も手で「鍛接」を行っている数少ないところ。包丁づくりの本場といわれる大阪堺市でも、毎日鍛接をやっているところは少ないと聞きます。田中さん自身も、福井の伝統工芸士さんのもとで修行されている。そうした本物を追求する姿勢にも感銘を受けました。

素晴らしい伝統技術を、新しいターゲットにアピールしたい。

田中
僕の師匠は、マグロ切り包丁を手打ち鍛造している日本で唯一の職人(伝統工芸士、清水正治氏)ですが、とても進歩的な考え方の人で。僕にも「基礎はできてるから、もう親を手伝え。あとは自分で考えろ」というスタンス。新しい感性や考え方を尊重してくれる姿にとても影響を受けました。 職人、鍛冶屋というと、内にこもっているというか、昔のやり方、売り方にこだわるイメージがあるかもしれません。でも、これだけ情報が行き交う時代なんだから、職人も外の世界を見た方がいい。私自身、修業時代に全国各地の展示会に出展した際、お客様と直接お話しするなかで、今までに感じなかった気づきがいっぱいありました。この『播鍛/BANKA』を通じて、昔から継承している素晴らしい技術を新しいターゲットに向けてアピールしていきたいですね。

「播鍛/BANKA」の名前に秘めた思い。

河島
田中さんの作る包丁やナイフは、今も海外の料理人やマニアの間で大人気ですよね。
田中
包丁が好きという料理人や、包丁やナイフを研ぐのが好きという人が、僕が作る包丁を気に入ってくれていて、そう言った人はとくに海外に多いですね。遠いのに、わざわざ工場まで足を運んでくれる人もいて、とても熱心に質問されます。そういった人が「今まで使っていたのは、なんだったんだ」と言って、必ずリピーターになってくれる。使う人にとって、そういった包丁に出会えるのはうれしいことかもしれないけど、僕ら職人としてもこんなにうれしいことはないですよね。
河島
とくに今は、『MADE IN JAPAN』の商品、とりわけ、手作りされたモノに対するリスペクトが海外で非常に高いですね。
田中
そうですね、その影響からか、日本の若い人にも職人志望の人が増えてます。
河島
新しいブランドにつけた「播鍛/BANKA」というネーミングには、包丁の産地といわれる、大阪・堺市や岐阜県関市、新潟県三条市に続くように、兵庫南西部の「播州」の包丁を、全国に広めたいという思いを込めました。「播州の鍛冶技術」だけでなく、「播州を鍛える」=もっともっと盛り上げるという思いを込めたものです。だから、梱包する箱などの資材も地元の小野市や三木市で調達しているし、包丁を巻く布地も、西脇で作られている麻布を使いました。この「播鍛/BANKA」から、全国へ、海外へ、播州の刃物をもっともっと知ってもらいたいですね。